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   クイナの生態

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What is ヤンバルクイナ?





名前


ヤンバルクイナ  [ツル目 クイナ科]

[和名] ヤンバルクイナ
[学名] Gallirallus okinawae
[英名] Okinawa Rail

漢字で書くと『山原水鶏
沖縄県の「地元」では、アガチャアガチー(意:せかせか走り回る)、ヤマドゥイ(意:山にいるニワトリ)とも呼ばれている。

 うんちく : Why 「ヤンバルクイナ」?
ヤンバルクイナを発見した山科研究所では、その世紀の発見以前から地元の人の証言などによって新種のクイナがその地域に生息していることは確信していた。
そこで、調査中にも新種のクイナの名前を検討していて、いくつか候補はあったものの、最終的には、この鳥の保護には地元の人の協力と理解が必要である、ということと、沖縄の一部の地域名である「やんばる」を名前に組み込むことで、その土地にしかいないという重要性、貴重性を知ってもらおう、という理由から「ヤンバルクイナ」と命名された。




身体の特徴


身体情報
  体長 ― 30〜35cm
  体重 ― 400〜430g


  体の割りに短くて丸く、筋肉も発達していないため、ほとんど飛翔能力はない。
  飛翔能力のない代わりに、走力や飛翔能力は高い。走るときにバランスをとるのに使用する。

模様
  上から見ると ― 無地の褐色。
  横から見ると ― 首から腹にかけて、黒の下地に白い横斑。
  顔は ― 黒の下地。目の後ろから白い線が延びる。

くちばし
  エサをとる時に、落ち葉や腐葉土を掘り起こしたり、木の実を突っついたりするのに使うため、硬い。色は鮮やかな赤色。


  嘴と同じく、鮮やかな赤色。太くて丈夫。強力な走力や跳躍力を生み出すよう、筋肉がよくついている。
  時速30kmで走ることができ、1mくらいは飛び上がることができる。

 うんちく : ヤンバルクイナの親戚は?
最近の研究結果で、ヤンバルクイナに最も近い種は、フィリピンからインドネシアに分布する「ムナオビクイナ」であることが分かった。ちなみにこのクイナには飛翔能力がある。
また、沖縄の1万8500年前の地層から発見されたクイナ類の化石は、脚が短いことから、飛ぶことが出来た可能性がある事が分かっている。




生活している場所


大きな範囲で言うと……
  日本、沖縄県、北部の森林・通称「やんばる(山原)」のみ。
  日本固有種

細かい範囲で言うと……
  亜熱帯性の湿潤な常緑広葉樹林に住む。
  木が生い茂り、下草も密に生育している地域とその斜面に多い。水鶏(クイナ)の名前通り、川や谷、水溜りなどの近くを好む。
  明るいところにはめったに出てこないが、時に農耕地や民家の近くにも姿を見せるときがある。

 うんちく : なんで沖縄だけなの?
遠い昔、まだ沖縄が大陸と陸続きだったころ、ヤンバルクイナの祖先は、沖縄まで分布を広げていた。その後、島が離れ、ヤンバルクイナの祖先は陸と隔離された。
取り残された狭い島の中には、偶然にも、天敵となる捕食者がおらず、それにより次第に「飛ぶ」ことをやめ、うっそうと茂る森の中での生活において、より効率の良いよう「走り回る」ことに適応していき、現在のヤンバルクイナになったのではないか、と考えられている。




鳴き声


キョキョキョキョ―
  夕方に聞くことができる、けたたましい声。
  500m離れていても聞こえる。
  この声は縄張り宣言に使われている、と考えられている。

クリリーヤ
  繁殖期に聞くことができる。
  カップル同士の呼びかけに使われている、と考えられている。




好きな食べ物


  落ち葉や腐葉土の中に潜むミミズや昆虫の幼虫などの土壌動物。
  地表のトカゲやカエル、カタツムリなど。
  時には草にとまっているバッタなどの昆虫を飛びついて捕らえる。




住まい


  ヤンバルクイナは夕方になると木に登り、横に伸びた枝などのとまりやすい場所で休む。寝るときも木の上。
  産卵・育児の為の簡単な巣は、落ち葉や枯れ枝などを集めてきて地面に作る。




繁殖と子供


  毎年、4〜8月に繁殖しているとみられている。
  一回に産卵する数は3〜4個。雛は、親鳥のきれいな模様とはかけ離れた、全身真っ黒な姿をしている。




天敵


  ヤンバルクイナの天敵は、外来種のノネコとマングース。ノネコやマングースについてはこちらへ。
  (外来種…もともとその場所にいなかった生物が、人間の手によって持ち込まれたもの)




ヤンバルクイナの危うさ


  ヤンバルクイナに限らず世界には、何らかの理由で数が減ってしまった動植物が多く存在する。
  そんな動植物は、いろいろな機関によってどのくらい減っていて、どの程度絶滅の危険性があるのか、などが調査され、いくつかのカテゴリーに分けられている。

  ヤンバルクイナが分類されているのは以下のカテゴリー。

  ◎RDB=絶滅危惧 IB類(EN)
  ◎JRDB=絶滅危惧 IA類(EN)
  ◎種の保存法=希少野生動植物種
  ◎国指定天然記念物


 RDB
  国際自然保護連合(IUCN)内にある、種の保全委員会(SSC)によって選定されたもの。
  一定の基準に基づく「レッドデータブック(RDB)」というリストの形で発表されている。
  ・EN(Endangered・絶滅危惧種)    ごく近い将来に絶滅する恐れがあるもの。
   基準は、成体の生息数が250〜2500、もしくは、生息域が5000ku以下で、ここ10年間または3世代で50%が減少したもの。


 JRDB
  RDBに基づき、より具体的な内容に環境省が作成・改定した、日本版レッドデータブック「日本の絶滅の恐れのある野生動物(JRDB)」に記載されているもの。選定基準などは、IUCNのRDBに準拠している。


 種の保存法
  正式名称「絶滅の恐れのある野生動植物の種の保存に関する法律」。1993年に施行。希少野生動植物種は、この政令によって定められ、定められた種は法律の柱とされている、個体保護、生息地保護、保護増殖の事業の対象となる。


 天然記念物
  学術上貴重であり、日本の自然を記念する動物、植物、地質、鉱物が対象。国や地方自治体が指定する。捕獲や採集、地域の開発などの行為が規制され、保存のための日常的な管理が行われる。

 うんちく : 新種発見!
1981年11月、世界は世紀の発見に揺れた。
宇宙や深海など隅々まで調査され尽くされたこの地球の、しかも小さな島国である日本で、新種の鳥が発見されたのだ。
 ≪日本での新種の鳥の発見は100年ぶりということ≫
 ≪発見された年からの10年間で発見された24種の新種の鳥のうち「先進国」で発見された大型の種であること≫
 ≪日本で唯一の飛べない鳥であること≫
 ≪飛べないクイナ類の中でも世界で最も北に分布していること≫
 などが話題になった。
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